はじめに
現代遊戯王、特に大会シーンにおいてほぼ必須カードといっても過言ではない手札誘発。中でも灰流うらら・増殖するG・無限泡影は特に汎用的でパワーが高いため、非常に多くのデッキで複数枚採用されています。
増殖するGは通りにくい通れば最強カードという安直な思考でとりあえず打っても強力ですが、灰流うららや無限泡影はそうはいかないことがあります。特に大会シーン初心者には、「どこに投げるかよくわからず打てるタイミングがあったのでとりあえず打ってみが、結局なんだか展開されて負けてしまった」という人も多いと思います。
この記事のシリーズでは主に手札誘発初心者の方向けに、どういう意識をもって打ちどころを決めるか、ということについて解説していきます。手札誘発は複数種類重ね引きしているとさらに打ち方が難しくなる性質があり、とても奥が深いです。これはまた別の記事で解説できればと思いますが、今回はその初歩の初歩、うららや無限泡影1枚のみを持っている場合について考えていきましょう。妨害カードなので相手のデッキや展開に応じて打ちどころは多岐にわたりますが、1つの考え方の提案として、少しでも参考になれば幸いです。
レシピと展開の中枢を覚える
これは手札誘発に限らず妨害全般に言えることですがまず一番大切なことは、よく対戦するデッキのレシピや展開を知ることです。
カードテキストと展開パターンをすべて覚えればそれに越したことはありせんが、いろいろなデッキを熟知するのは容易ではありません。そこで、各デッキの強くて必ず通したい動き、つまり展開の中枢だけは覚えるようにしましょう。例えば「エクソシスター・マルファを通したら終わる」とか「VSラゼンに触られたらやばい」とか「電脳堺-瑞々は宇宙」とか「恐竜にはミセラサウルスがいる」とか「HEROのヴァイオンは優秀すぎ」とかこういうのです。
相手はこの動きを始めるために、あるいはこの動きを通すためにカマかけとして、様々な動きをしてきます。そういった別の動きにとらわれず、展開のボトルネックを確実につぶす、というのが手札誘発を打つ上で大切な点だと思います。川の流れに例えると、川をせき止めるなら一番狭い部分を止める、というイメージですね。
裏目と確率を考える
TCGは相手の手ごまがすべて公開されている将棋やチェスト異なり、相手の不確定な部分による「裏目」というものが必ず存在します。具体的に言うと相手の手札に引いているカードと相手のデッキの採用カードによる不確定性によるものです。
相手の手札に引いているカードの不確定性
例えば、次の様なケースを考えてみましょう。
自分の手札には手札誘発が灰流うららのみ。相手がR-ACEエアホイスターを召喚から効果を発動。ここに灰流うららを当てたらEmergencyを発動され普通に展開されてしまった。
R-ACEはタービュランスの特殊召喚および効果の発動が一番の中枢ですので、これに繋がらないようにうららを打ちたいですね。エアホイスターにうららを当てる場合と、その先のEmergencyにうららを当てる場合について、タービュランスに繋がってしまう状況について比較してみましょう。
最初に、ディアベルスターや指名者など、どちらの場合も展開されてしまう場合は比較にならないので考慮から外します。こういう手札の場合はどうプレイしても負けてしまうので、手札の問題として割り切りましょう。問題なのはそういうあからさまな貫通札を持っていない場合です。こういう「相手の先攻手札が100点満点ではなく、かつこちらの後攻手札も満足ではない」という状況において、プレイングの差が出てきます。
エアホイスターにうららを当てる場合、先の例のようにEmergencyを引かれていると普通に展開されてタービュランスまで通されます。EmergencyはほとんどのR-ACEデッキに3枚入っているため、残りの不確定手札4枚の内にEmergencyを引かれている確率は結構大きいです(40枚デッキなら28.4%)。
次にEmergencyにうららを当てる場合を考えます。この場合、R-ACEプリベンターを握られている場合と、R-ACEハイドラントを握られている場合に、追加の展開の可能性があります。一見するとこちらのほうが危険そうですが、実はこの場合の展開は非常に弱いです。プリベンターを握られている場合、Emergencyを除外して特殊召喚されますがプリペンダーとホイスターが立って終わります。妨害としてはプリベンターのみです。リトルナイトの可能性もありますね。ハイドラントを握られている場合、Emergencyではなくヘッドクォーターをサーチされる可能性があります。この場合ハイドラントを召喚して展開できますが、この場合ハイドラントにうららを当てればハイドラントとホイスター2体が棒立ちで終わるので、せいぜいリトルナイトを構えて終わりです。つまり、Emergencyにうららを当てた場合、1枚でタービュランスにつなげられるカードはR-ACE内には存在しないのです。
ただし先の2パターンで、加えてタービュランスを素引きされている場合は、タービュランスを出させて効果を許してしまいます。この、「残りの不確定の手札4枚にプリベンターかハイドラント、加えてタービュランスを握っている確率」はわずか6.7%です。(40枚デッキでプリベンターとタービュランスが2枚ずつで計算しています。)
以上ごちゃごちゃと書きましたが、R-ACEがエアホイスターから入った場合をまとめると
- エアホイスターにうららを打つ裏目は「Emergencyの素引き28.4%」
- Emergencyにうららを打つ裏目は「ハイドラント・プリベンターどちらか1枚とタービュランスの重ね引き6.7%」
数字にすると一目瞭然です。相手がよくあるR-ACEデッキの構築の場合、Emergencyにうららを打つほうが裏目の確率が少なく有効打になりうるということになります。
相手のデッキの採用カードによる不確定性
次のケースを考えます。
こちらの手札に無限泡影のみ。相手はティアラメンツクシャトリラを切ってディアベルスターを特殊召喚し効果を発動。原罪宝スネークアイからカオスルーラーにつなげる動きだと予想しカオスルーラーまで無限泡影を温存していたが、ディアベルスターで裏切りの罪宝-シルウィアをセットされて妨害を構えられてしまった。
これでシルウィアで妨害されて負けたとして、ディアベルスターに無限泡影を当てたほうがよかったのでしょうか?やはり罪宝ティアラメンツの一番防ぎたい動きはカオスルーラーです。なので、この中枢を防ぐために無限泡影を温存するのは、確率的に考えてよくある選択肢だと思いますよね。
この例のようにサーチ等未確定のプールに触る行動を通してしまうと、相手のデッキの採用しているカードによって裏目が存在してしまう場合があります。こういう場合でも、考える上での大切な部分はやはり中枢はどこかという点です。というか、何か基にする考えがないと、思考や読みというものはできません。
やはり罪宝入りのティアラメンツでカオスルーラーを中枢とするタイプは多く、無限泡影の一番当たりの強い部分もここです。対して、シルウィアが入ったティアラメンツは(2023年9月19日時点ですが)大会等でそうそう見受けられるものではありません。
一番よく見るであろう構築をもとに考えてプレイしたが、実際には予想外のカードが入っており負けてしまっても、それはその考えやプレイングが悪手だったのではないのです。一番起こりそうなことを予想して、結果それが間違っていたとしても、結果論でしかありません。交通事故にでもあったものとして割り切りましょう。
終わりに
今回は灰流うららや無限泡影を打つ上での大切な考え方を2つ、「レシピと中枢の記憶」と「裏目の考慮」について解説しました。大会シーンに慣れた方には当たり前だったり、この記事とは食い違うさらに深い考えをお持ちだったりするかもしれません。考え方の1つの意見として、少しでも参考になれば幸いです。もっとほかのケースの考えや手札誘発複数種重ね引きの特殊な考え方については、また次の記事にて。
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